神戸地方裁判所 昭和58年(ワ)1587号 判決 1984年6月28日
主文
一 被告は原告に対し、被告発行にかかる株券一、〇〇〇株券二枚を一〇〇株券二〇枚に分割する手続をせよ。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを二分し、その一を原告の、その余を被告の各負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 主文第一項同旨
2 被告は原告に対し、適法な様式を具備した株券を交付せよ。
3 被告は、昭和五八年一二月二五日から右1、2の各請求の履行を怠ること一ケ日につき金一万円の金員を原告に支払え。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 原告は被告会社の発行済株式一五万株のうち二六七五株を所有する株主である。
2 原告は昭和五八年一一月一四日、被告より交付を受けている株券(以下、本件株券という)のうち一〇〇〇株券(券面額五〇万円)二枚を一〇〇株券(券面額五万円)二〇枚に券種変更するよう請求したが、被告はこれに応じない。
3 また、本件株券の記載事項中株式発行の年月日の項に昭和五八年一一月一日と表記されているが、登記簿の記事より明らかなように、昭和五八年一一月一日にはもちろん、昭和四五年五月一日(会社設立の日)と昭和五八年六月一七日(会社合併による発行済株式の増加の日)以外の日に株式が発行された事実はないのであるから、かかる記載は虚偽のものである。よつて、原告は、昭和五八年一一月一五日、被告に対し、本件株券を回収し相当の訂正をなすよう請求したが、被告はこれにも応じない。
なお、本件株券の記載によると、昭和五八年一一月一日から同月二日まで大洋興業株式会社に株式が発行されていたことになるが、かかる事実もない。
4 以上の次第であるから、原告は被告に対し、前記券種変更ないし株券分割の手続を求めるとともに、適法な様式を具備した株券の交付を求め、さらに右請求の実現を確保するため、訴訟送達の翌日から、被告が右義務の履行を懈怠すること一ケ月につき金一万円の金員を原告に支払うべき旨の判決を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1、2の事実は認める。
2 請求原因3の事実のうち、本件株券の記載事項中、株式発行の年月日が昭和五八年一一月一日と記載されていること、株券の訂正を求めた原告の要求を被告が拒否したことは認め、その余は争う。
右株式発行年月日欄の「昭和五八年一一月一日」は、原告に交付した株券の発行の年月日を記載したものである。
3 請求原因4は争う。
三 抗弁
被告会社庶務担当者は、株式分割の請求をした原告に対して、会社の性格や株主構成等を説明し、右請求には応じられない旨回答した。
被告会社の株式は流通していないのに、原告は流通させるためと称して分割請求をするのは、被告会社を困惑させることのみを目的として株主権を行使しようとしていることが明らかである。
原告には一〇〇〇株券を一〇〇株券一〇枚に分割する必要性も正当性も存在しないから、正当な株主権の行使とは認められず、権利の乱用というべきである。
四 抗弁に対する認否
抗弁事実は争う。
第三 証拠(省略)